■ 経過
第3病日(8/25)、17:45緊急開腹術を行った。

No.1
No.2
No.3
  1. 回腸は100cmわたり、非連続性の虚血性変化を認めた。一部の腸管壁は薄く、穿孔直前と考えられた。
  2. 健常部分左右5cmずつ含め小腸を切除し、端々吻合を行った。
  3. 虚血性変化を来たした部位と正常部位の境界は鮮明であった。

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術後経過は良好で、術後11日目に軽快退院した。


■ 確定診断名 門脈ガス血症 (虚血性小腸炎)

■ 考 察
  • 門脈ガス血症 (Hepatic portal venous gas: HPVG)の発症機序は、以下の3点が考えられている。
    1.
    腸管の壊死、炎症、潰瘍などによる粘膜の損傷(mucosal damage)
    2.
    イレウスや注腸造影検査、内視鏡検査での空気注入などによる過度の腸管内圧の上昇(bowel distension)
    3.
    ガス生産菌の門脈内移行(sepsis)
  • 腸管内ガスは門脈へと移行し、門脈流に沿って末梢の枝まで移動する。肝辺縁2cm以内にairが存在していた場合、HPVGと診断する。
  • 鑑別すべき病態として胆道内ガスが挙げられるが、胆汁の流れは末梢から肝門部に向かうため、airは肝門部に集中する点で異なる。
  • 原因疾患として以下が挙げられる。

腸管虚血・壊死例 (47.3%)
腹腔内膿瘍 (9.6%)
腸管拡張 (9.2%)
腹部外傷 (4.4%)
胃潰瘍 (3.5%)
潰瘍性大腸炎 (3.1%)
内視鏡 (3.1%)
Crohn病 (3.1%)
腹腔内腫瘍 (2.6%)
胆管炎 (1.8%)
膵炎 (1.3%)
劇症肝炎 (0.9%)

  • HPVG報告例全体での死亡率は16.7%にすぎないが、腸管虚血・壊死をきたした場合には死亡率59.3%と高値であり、予後不良である。
  • 画像診断能の向上HPVG自体は予後不良のサインではない。しかしHPVGを認めた際には、原因疾患の約半数を占め、かつ予後不良である腸管虚血・壊死を念頭に置く必要がある。臨床所見の変化に注意し、適宜エコー・CTを用いての経過観察が望まれる。

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