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■ 経 過 |
意識障害は50%ブドウ糖20ml投与にて改善した。しかし、翌日も空腹になるとジスキネジアが出現した。 |
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■ 臨床診断名 |
低血糖脳症 |
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■ 考 察 |
- 低血糖は、血液透析や腹膜透析を行っているいずれの糖尿病患者にも見られ、インスリン分解の低下、食事の摂取不足や吸収不足によることが多い。糖尿病の有無にかかわらず、腎不全患者では、膵β細胞からのインスリン分泌が減少し、末梢組織でのインスリンに対する反応性も抑制されている。一方、インスリンの腎及び腎外での分解も減少しているため、血中インスリンの半減期は延長している。インスリン治療を行っている糖尿病透析患者では、インスリン抵抗性よりインスリン分解遅延の影響の方が重要となり、外因性に投与されたインスリンの効果は増強され、遷延する。このためインスリンは通常以下の投与量でよく、長時間作用するインスリンによっても低血糖が起こりうる。
- MRIでは、急性期にT1強調像では低信号、T2強調像で高信号を主体とする領域が、皮質及び皮質下白質・基底核・視床にびまん性に認められる。部分的にT1短縮域を混在する例も認められる。亜急性期には造影剤増強効果を呈する。
拡散強調像における知見では、ADC (apparent diffusion coefficient)の低下が生じ、その後ブドウ糖を投与することでADCが回復したとの報告がある。これは超急性期硬塞と同様の機序が低血糖においても起こり、可逆的な変化であり得ることが示唆される。細胞外液の細胞内への移動が推測される。
- 多くの場合、低血糖を引き起こす病態の存在や血糖値の情報から、低血糖脳症の診断は既に臨床的についており、鑑別が問題となることは少ない。浸透圧性髄鞘融解症は橋、基底核などにT2強調像で高信号を生じる。糖尿病関連では、低血糖発作による橋中心髄鞘融解症の報告が見られるが、その病因は不明とされており、本症例に関しても橋外髄鞘融解症は否定できないと考えられた。
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■参考文献 |
- 石岡久和 : 糖代謝異常. 臨床画像, 16 : 76-79, 2000.
- Rajbhandari SM, et al : Central pontine myelinolysis and ataxia: an unusual manifestation of hypoglycaemia.Diabet Med.1998; 15 : 259-61.
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