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■ 鑑別診断名 |
単純な脂肪腫とは異なるようで、脂肪肉腫が1st impressionになるが・・・ |
■ 確定診断名 |
Hibernoma(冬眠腺腫)(H15.8.8 切除術施行) |
■ 考 察 |
- Hibernomaは動物の冬眠腺の褐色細胞に類似した非常に稀な良性脂肪腫で、1906年Merkel1)によりbrown lipomaの名称で最初に報告され、1914年Gery2)によりHibernomaと名付けられた。褐色細胞組織は、冬眠動物にみられる固有の組織であるが、ヒト、サル、ブタ、ウサギ、ネコ等の非冬眠動物にも存在する。ヒトでは、胎生5ヶ月頃に最も発達するが、出生後次第に減少し白色脂肪組織に置換されていくとされている。新生児では肩甲骨間領域の皮下組織の深層部、頚部の血管と筋肉組織の周辺、その他縦隔、腹壁、副腎周囲、大動脈、腎周囲、上腸間膜領域に分布する。従って、Hibernomaの好発部位は肩甲骨間領域に最も多くみられ、頚部、腋窩、縦隔、腹壁、大腿等の褐色脂肪の残存部位に一致する。年齢的には30〜40歳代にピークがあるとの報告が多い3)4)。
- 腫瘍は肉眼的に薄い被膜で覆われ、黄色〜やや褐色調を呈する。病理組織学的には、腫瘍実質は間質(結合織)によって分葉され、比較的毛細血管に富んでいる5)とある。
- 今回、我々はLipoma/Liposarcomaを考え、明らかな浸潤は無いものの形態がやや不整で、内部に淡い造影効果があることを考えて、術前診断はWell-differentiated liposarcomaと考えた。画像のみからは確定診断にいたるのは困難と考える。この腫瘍の存在を認識しておいて、好発部位に内部に微細な造影効果をもつ脂肪性の腫瘍を見た際に鑑別に挙げることが肝要と考える。またHibernomaの褐色細胞は代謝の盛んな細胞で、臨床的に体重減少が生じたり、PETで集積が認められるなど、悪性腫瘍に似た所見があることも認識しておく必要がある。
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■参考文献 |
- Merkel H : Beitr Pathol Anat39 : 152,1906
- Gery L : Bull Mem Soc Anat Paris89 : 111,1914
- 三村みどり 他: 皮膚25 : 249,1983
- 堀田 拓 他: 埼玉県医学会雑誌28 : 690,1994
- 洙田 由美子 他: 臨床皮膚科51(13) : 1129-1131,1997
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