■ 鑑別診断 ラトケ嚢胞、くも膜嚢胞、類上皮腫

■ 確定診断名 頭蓋咽頭腫(扁平上皮乳頭型)

■ 病理組織像

嚢胞内面を重層扁平上皮が被い、やや乳頭状に配列する。扁平上皮乳頭型の頭蓋咽頭腫。


■ 考  察 
  • 頭蓋咽頭腫は原発性脳腫瘍の1.2〜4.6%を占め、5〜14歳と40〜60歳に好発年齢のピークが見られる。エナメル上皮腫型と扁平上皮乳頭型の二つの組織型があり、乳頭型は成人に生じる。
  • MRIでは嚢胞部と充実部からなる腫瘤を鞍上部を主体に認める。嚢胞内の信号はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示すものや、T1強調像で高信号、T2強調像で低または高信号を示すものなど様々である。嚢胞のT1強調像での信号上昇には内容液の蛋白濃度やメトヘモグロビンが関与しているといわれる。本症例では約1年間で信号強度と大きさに変化が見られ、嚢胞内出血が示唆された。
  • 鑑別診断としてはラトケ嚢胞、くも膜嚢胞、類上皮腫などが挙げられる。
  • 頭蓋咽頭腫の小児例の多くは、CTで結節状〜孤状の石灰化を認めるが、成人では石灰化の頻度は低いとされている。本症例では腫瘤前部に小石灰化が見られ、鑑別の一助となったが、術前診断は困難であった。

■参考文献  日向野修一 : 頭蓋咽頭腫. 臨床画像, 19 : 46-47, 2003.

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