■ 診断および経過 手術が施行された。
腫瘤は胃、肝、膵、脾と連続はなくsmall omentum内に認められ、径10×10×8cm大、灰白色、充実性で多巣性に壊死を伴なう。組織学的には異型紡錘形細胞が束状に配列し錯綜する像よりなる。核分裂像は多く平均1/1HP以上認める。免疫組織学的には腫瘤はc-kit強陽性、CD34強陽性、desmin陰性、actin弱陽性、S-100蛋白弱陽性であった。

■ 確定診断名 small omentum に発生したmalignant gastrointestinal stromal tumor (以後GISTと略す)

■ 考 察  GISTは消化管、腸間膜、後腹膜などにでき消化管に発生する間葉系腫瘍の中で最も頻度が高く、KITの発現を認めることで診断がなされる。
 発生に対し、地理的、民族的、職業的な差は報告されていない。発見時の年齢は50歳以上が多く性差に関しては男性の方が少し多いという報告もある、性差がないという報告もある。
 症状は発生部位に依存する。部位別の頻度では、胃に最も多く70%、小腸に20-30%、直腸肛門部に7%、その他大腸、食道に発生する。小網、腸間膜にできるGISTは稀とされており、報告によれば平均径16.5cmと大きく、出血や壊死、嚢胞性変化を伴うことを反映し嚢胞、充実成分を併せ持った腫瘤が多い。
  本例の様に、内部に壊死を伴なった腫瘍に対する鑑別としては、leiomyosarcoma,malignant fibrous histiocytoma、fibrosarcoma、liposarcomaなどが考えられるが、消化管だけでなく小網、腸間膜発生の腫瘍に対しても稀ではあるがGISTを鑑別に挙げる必要があると思われた。

■参考文献 Remotti, E.Helen et al.: Gastrointestinal Stromal Tumors: Radiologic Features with Pathologic Correlation. Radiographics 23:283-304, 2003

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