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■ 診断および経過 |
手術が施行された。腫瘍は、頚静脈孔近傍の髄膜由来と思われ、小脳橋角部を主座としていた。小脳橋角部の腫瘍は摘出できたが、頚静脈孔内の腫瘍は摘出できなかった。また、下位神経にも癒着がひどくこちらも残存した。手術標本のマクロ像では、石炭様に黒い、被膜のある、やわらかい腫瘤で、標本内には、出血の所見は全く認められなかった。細胞質内に茶色の顆粒が認められ、核の多型はあるが、異型、mitotic figures、壊死、浸潤はなかった。
免疫染色は、以下の通りであった。
S-100, HMB-45 : positive , epithelial membrane antigen : negative |
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■ 確定診断名 |
intracranial meningeal melanocytoma |
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■ 考 察 |
Intracranial meningeal melanocytoma は、良性のメラニン細胞腫瘍である。悪性の報告はこれまでにも多くみられるが、良性の報告は少ない。過去の文献では、これまでに14例の報告が見られ、年齢は、27-69 歳(平均 53 歳)、性差はなく、そのうち8例がposterior cranial fossa に、2例がMeckel's cave に認められたと報告されている。
CTでは、境界明瞭で等から軽度高吸収の実質外腫瘤として描出され、石灰化は少なく、均一な造影効果を呈することが多いといわれている。また、MRIではT1強調画像で高信号、T2強調画像では低信号を呈するのが特異的とされる。腫瘤のメラニン含有が多ければ多い程、メラニンのparamagnetic effect により、T1、T2緩和時間を短縮させ、T1強調画像で高信号化、T2強調画像で低信号化が見られるが、すべての腫瘤の信号の説明はできないと報告した文献も認められる。
鑑別診断としては、malignant melanoma, pigmented meningioma, melanotic schwannoma などが挙がると思われる。
治療は、手術が第一選択であるが、癒着が強く、完全に摘出するのが難しい症例が多い。残存腫瘤に対しては、γ-knifeなどの放射線治療が選択される場合が多く、比較的良好な効果が得られている様である。本症例でも、手術後の残存腫瘤に対して、60Co gamma unit を用いた放射線治療が施行され、術後24か月の経過観察中、残存腫瘤の再増悪や転移は認められなかった。 |
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■参考文献 |
Hamasaki O. et al.: Intracranial Meningeal Melanocytoma. Neurol Med Chir 42:504-509, 2002. |
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