■ 経過

7月15日MRI(T2WI)
1989年に皮膚潰瘍、陰部潰瘍、ぶどう膜炎が出現し、べーチェット病と診断され、副腎皮質ステロイド(プレドニン5mg)を内服中であった。

神経ベーチェット病を疑い、プレドニン50mgを内服したところ、構音障害、嚥下障害、四肢筋力低下など、2ヶ月で徐々に改善した。

7月15日(発症約5ヶ月)のMRIでは病変は著明に縮小し、T2強調像で小さな低信号域を認めるのみとなった。脳幹部は萎縮が進行した。
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■ 臨床診断名 神経べーチェット

■ 鑑別診断 脳膿瘍、脳梗塞、多発性硬化症、全身性エリテマトーシスや結節性動脈炎などの血管炎、neuro-Sweet病

■ 考 察
  • ベーチェット病は口腔内アフタ、陰部潰瘍、ぶどう膜炎を古典的3主徴とする原因不明の難治性血管炎である。中枢神経系が障害される頻度は5-10%で、神経ベーチェット病とよばれ、症状や経過は多発性硬化症に類似する。多くは皮膚粘膜病変が先行するが、約5%の患者では中枢神経病変が先行する。
  • 神経ベーチェット病のMRI所見では、病変は中脳間脳移行部(46%)橋延髄(40%)に好発し、急性期には脳幹の長軸方向に沿って浮腫が広がる。病変部に出血を伴うこともあり、急性期には造影効果がみられることもある。慢性期にはT2延長域は著明に縮小し、脳幹は萎縮する。視床、視床下部、大脳基底核、内包、大脳皮質下領域にも病変が認められる。
  • 急性期の拡散強調像では、ADCが上昇すると報告されており、これは間質に炎症性変化がおきて、血管性浮腫が生じるためとされている。本例のリング状の造影効果を示す脳幹病変は急性期にADCの軽度低下がみられ、1ヶ月後にはADCは上昇した。我々の調べた限り、ADC低下を示した報告はこれまで認められない。神経べーチェットは組織学的に血管(細静脈)周囲の炎症性変化、虚血、脱髄などがみられ、細胞性浮腫によるADC低下も来たしうると考えた。

■参考文献
  1. Kocer N, Islak C, Siva A, et al. CNS involvement in neuro-Bechet syndrome : an MR study. AJNR 20:1015-1024,1999.
  2. Kunimatus A, Abe O, Aoki S. Neuro-Behcetユs disease: analysis of apparent diffusion coefficients. Neuroradiology 45:524-527, 2003.
  3. Kang W, Chu K, CHO JY. Diffusion weighted magnetic resonance imaging in Neuro-Bechetユs disease. JNNP 70: 412-413, 2001.

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