■ 確定診断名 卵管平滑筋腫捻転

■ 鑑別診断 子宮漿膜下筋腫捻転

■ 考 察  開腹にて左卵管は超鶏卵大に腫大していた。卵管腫瘤は基部で捻転し、暗赤色に変色していた。左卵管切除術が施行された。子宮、両側卵巣、右卵管に異常は認めなかった。
 摘出された腫瘤は重量56g、6.5×5.5×5.5cm大で、割面は赤褐色を呈していた。拡大像にて腫瘤の中心部分は紡錘状の平滑筋細胞が索状に配列し、卵管平滑筋腫と診断された。免疫染色でα-SMAは陽性であった。毛細血管内には赤血球が充満しており、うっ血を示す所見であった。腫瘤の辺縁部分は浮腫状であった。これらの病理所見とMRI所見は合致すると思われる。
 卵管平滑筋腫はきわめて稀な卵管腫瘍で、世界で約60例の報告があるのみである。単発で小さく、片側性が多い(とくに左側発生が多い)とされる。本症例も左側発生であった。大部分は無症状で偶然発見されるが、中には急速な増大や変性、捻転などが原因で症状を呈する場合もある。
 画像診断についての報告はされていないが、無症状なものでは内部は子宮平滑筋腫と同様の信号を、捻転を生ずると出血性梗塞や造影効果の消失、捻転部でのflow voidの集中像などが出現すると考えられる。

図-9
切除標本(肉眼)
図-10
切除標本(割面)

図-11(組織標本)
弱拡大
図-12(組織標本)
強拡大
図-13(組織標本)
α-SMA染色


■参考文献
1) Misao R, Niwa K, Iwagaki S, et al. Leiomyoma of the fallopian tube. Gynecologic and Obstetric Investigation 2000;49:279-80.

2) Rha SE, Byun FY, Fung SE, et al. CT and MR Imaging features of adnexal torsion. RadioGraphics 2002;22:283-94

3) Nishino M, Hayakawa K, Iwasaku K, et al. Magnetic resonance imaging findings in gynecologic emergencies. Journal of Computer Assisted Tomography 2003;27:564-70


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