■ 経 過 画像より、胆石イレウスと診断され、SBT/CPZ投与開始した。
翌日血液透析施行後、胆石摘出・イレウス解除術を施行. 胆嚢十二指腸瘻閉鎖術は二期的に手術予定となった。
術後、腎機能改善を認めた。
食事開始後も問題なく経過しており、二期目の手術(胆嚢十二指腸瘻閉鎖)は外来で経過をみてからとなり、退院となった。

■ 確定診断名 胆石イレウス(gallstone ileus)

■ 考 察  胆石イレウスは胆石症の0.15〜0.16%、イレウス中の0.05〜1%と稀な疾患であり、男女比は1:2〜4と女性に多くなっている。 平均年齢は約70歳である。嵌頓部位は回腸が53%と最も多く、以下、空腸34%、十二指腸10%、結腸3%となっている。特に十二指腸球部に嵌頓する場合は稀であり、Bouveret症候群とよばれている。結石平均径は空腸で4.28cm、回腸では3.83cmと空腸に大きい傾向がある。
 診断は腹部X-ray、腹部CTが有用である。腹部X-ray上では、腸管内結石像の診断率は30.8%、胆道内ガス像の診断率は28.8%であるのに対して、腹部CTではそれぞれ腸管内結石像83.3%、胆道内ガス像42.9%と診断率が高く、腹部CTが診断に有用な検査といえる。しかし、腹部X-rayでもRigler's triadとよばれる胆道内ガス像・胆道外結石像・腸管拡張像を認める場合には腹部X-rayのみでの診断が可能である。本症例はこれら3徴全てを認め、腹部X-rayのみでの診断が可能であった症例であったと言える。
 今回の場合、約1週間診断がつかないまま保存的治療で経過観察されており、腎機能異常、全身状態の悪化を引きおこした。胆石イレウスは結石が腸管内で少しずつ移動するため症状の増悪・寛解をみることがあるため、脱水による腎不全・敗血症が問題となることがしばしばある。また、保存的治療により軽快しない場合には迷わず手術に踏み切る必要がある。画像による早期診断が非常に有効である疾患である。

■参考文献
1) 牧野勲:胆石イレウス. 肝胆膵33(5):775-779, 1996.

2) 花田敬士,伊藤正樹,平岡政隆,他:術前診断が可能であった胆石イレウスの1例. 胆道8:272-276, 1994.

3) 石川敏昭,川端啓介,木田孝志,他:十二指腸球部に嵌頓した胆石イレウス(Bouveret症候群)の1例. 日臨外会誌66:155-159, 2005.

4) 竹下訓子,前田利郎,関川修司,他:術前診断にThin-section CTが有用であた空腸嵌頓胆石イレウスの1例. 日本腹部救急医学会雑誌23(3):557-560, 2003.

5) 小川達哉,藤田昌紀,金子広美,他:超高齢者の胆石イレウスの1例と本邦報告例の検討.日本腹部救急医学会雑誌20(8):1161-1165, 2000.

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