■ 鑑別診断 (腫瘍マーカーが不明であれば)
・胆管細胞癌
・炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(炎症性偽腫瘍)
・肝血管腫
・肝悪性リンパ腫
・転移性肝腫瘍

■ 確定診断名 細胆管細胞癌

■ 解 説 細胆管細胞癌は原発性肝癌の中でも極めて稀な腫瘍であり、原発性肝癌取扱い規約では胆管細胞癌の特殊型に分類される1)。Steinerらによって初めて記載された疾患概念であり(1959年)2)、当時は原発性肝癌の約1%と報告されていたが、最近ではShiotaらは0.56%以下と報告している(2001年)3)。組織発生学的にはHering管に存在する肝前駆細胞の関与が推測されている。Hering管は毛細胆管(肝細胞由来)と小葉間胆管(胆管細胞由来)との移行部にあり、肝内胆管系で最も細胞増殖活性が高い部位である。同部位に存在する肝前駆細胞は胆管上皮細胞と肝細胞の両者に分化し得る細胞とされ、その活性化が細胆管細胞癌の発生に関与している可能性が示唆されている。実際、肝細胞癌や胆管細胞癌の腫瘍内に細胆管細胞癌類似の癌成分を認めることはあるが、細胆管細胞癌類似の癌成分のみからなる悪性腫瘍を組織学的に細胆管細胞癌と診断する4)

画像上の特徴としては造影CTにて早期濃染を示し、造影効果の遷延を認める。特に3cm以下の小径の場合は比較的均一な濃染を示す。内部は門脈枝が貫通する場合が多い。また、胆管細胞癌と比較してリンパ節転移の頻度が少なく、背景病変に慢性肝障害を有する場合が多い
5)。鑑別診断としては早期濃染を示し、造影効果の遷延を認めることと門脈枝や肝静脈の貫通を認めることから、肝血管腫や肝悪性リンパ腫などの鑑別に苦慮することが予想される6), 7), 8)。しかし、臨床所見と血液検査での腫瘍マーカーを確認することで、すくなくとも悪性腫瘍の診断は容易であると思われる。

以上から、日常診療で血管腫と診断されていた比較的小径の肝腫瘤が経時的に増大傾向を認めた場合は、細胆管細胞癌を含めた悪性腫瘍の可能性を念頭に置き、血液検査にて腫瘍マーカーを参考にする必要があると思われる。

■参考文献
  1. 日本肝癌研究会編:臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第5版,2008,金原出版
  2. Steiner PE, Higginson J. Cholangiolocellular carcinoma of the liver. Cancer 1959;12:753-9
  3. Shiota K, Taguchi J, Nakashima O, et al. Clinicopathologic study on cholangiolocellular carcinoma. Oncology Reports 2001;8:263-8
  4. 原田憲一,小坂一斗,中沼安二:細胆管癌の病理.肝胆膵 50 (6):853-858,2005
  5. 小林聡,松井修,蒲田敏文,他:末梢型肝内胆管癌の画像診断.肝胆膵 50 (6):933-940,2005
  6. 大塚将之,伊藤宏,木村文夫,他:細胆管由来の肝内胆管細胞癌(最胆管細胞癌)と考えられた1切除例.肝胆膵 47 (6):915-921,2003
  7. 竹内啓,菅井望,関英幸,他:急速な転帰を辿った細胆管癌の1剖検例.日本消化器病学会雑誌 102 (6):718-722,2005
  8. 岡田俊一,北村敬利,雨宮史武,他:小型早期肝癌ながら極めて多彩な組織像を呈した細胆管細胞癌の1例.Liver Cancer 11 (2):170-177,2005

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