■ 診断・解説 手術；頭蓋骨腫瘍切除，硬膜形成術
■ 術中写真 頭蓋底の硬膜を切開したところ，頭蓋底より隆起する骨病変を認めた。同部にクリーム状の粘稠な液体付着を認めため，培養に提出し，好気，嫌気，塗抹いずれも陰性であった。

図-8

■ 病理学的所見 図９，10；ハバース層板を認め，緻密骨の所見であった。一部海面状骨部分も含まれていた。
図11；一部では線毛円柱上皮も認められた。軟骨冠の形成はなかった。
病理学的診断　Osteoma

図-9,10,11

■ 確定診断名 前頭洞上壁由来のosteoma
　　これによる硬膜穿孔，気脳症
■ 解　説 解説(1)；osteoma について
・骨表面より突出した緻密骨の塊。良性骨病変。
・骨腫瘍というよりも，過形成/hamartoma。
・部位； 頭蓋骨・ 副鼻腔　　　
・サイズ； 通常2cm以下
・形態； 副鼻腔＝ポリープ状 頭蓋骨＝外方へドーム状
・頻度； 他疾患での副鼻腔単純Xp撮影症例の0.25〜0.4％　
M : F = 1.5 : 1 〜 3 : 1 20-50　歳代
・成因； 胚形成組織/外傷/炎症
・ 発育； 緩徐　
・画像診断； CT，Xp　　　　　　　　　
Xp，CT；境界明瞭で均一な高濃度。
MRI；いずれの撮像法でも無信号。（細胞成分がほとんどないため）
・ 鑑別診断；傍骨性骨肉腫，骨軟骨腫，fibrous dysplasia，ossifying fibroma
・ 臨床症状； Osteoma自体は無症状。　
・ 合併症； 脳膿瘍，髄膜炎，気脳症，頭蓋内粘液貯留嚢胞。
※ 骨腫を合併する全身疾患；Gardner syndrome；Desmoid と消化管ポリポーシス

解説(2)；気脳症(Intracranial pneumocephalus)の原因について
1. 外傷 (74 %) :
(a) 鈍的外傷；頭蓋骨骨折の3%，副鼻腔や頭蓋底に及ぶ骨折の8% (前頭洞＞篩骨洞＞蝶形骨洞＞乳突蜂巣)　
(b) 貫通外傷
2. 副鼻腔に及ぶ腫瘍（13 %）
(a) 前頭洞や篩骨洞由来の骨腫　 (b) 下垂体腺腫　(c) Mucocele, epidermoid
(d) 副鼻腔内の悪性腫瘍
3. ガス産生菌の感染　(9 %)
4. 手術　(4 %)

解説(3)；Osteomaによる気脳症
・症状；急性；激しい頭痛
　　　　慢性；頭痛，人格変化，認知障害，異常音の訴え
・経過；可及的/待機的にope。但しope待機中に急激に意識レベル低下，呼吸状態悪化を認めた報告あり。
■参考文献
  1. Mahabir R, Szymczak A, Sutherland G. Intracerebral pneumatocele presenting after air travel. J Neurosurg 2004;101:340-2.
  2. Dahnert W: Differential diagnosis of brain disorders; Radiology review manual. 6th ed, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, p.236, 2007.
  3. Nakayama Y, Tanaka A, Ueno Y, et al. Pneumocephalus associated with ethmoidal sinus osteoma - case report -. Neurol Med Chir 1998;38:875-8.
  4. Castelnuovo P, Valentini V, Giovannetti F, et al. Osteomas of the maxillofacial distinct:endoscopic surgery versus open surgery. J Craniofacial Surg 2008;19:1446-52.
  5. 藤本肇, 村上康二, 江口正信, 他：骨形成を特徴とする病変．画像診断22：239- 48, 2002
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