■ 経過
CT、GIF、CFより
を疑い、第13因子を測定し40%以下(基準値70%以上)であったため
と診断された。
ステロイドと第13因子製剤フィブロガミンの補充を開始。開始翌日より腹部症状の改善を認め、4日目の腹部エコーにて小腸の浮腫性変化は消失していた。
症状は完全に消失し、二週間後に退院した。
■ 確定診断名
■ 考 察
は細動脈、毛細血管、細静脈に免疫複合体IgA型抗体が沈着して生じる全身性の血管炎である。皮膚、腸間膜、関節滑膜等の小血管に血管炎が生じ、紫斑、腹痛、関節痛を三大兆候とする。約50%に糸球体腎炎を合併する。3〜10才の小児に好発するが、成人発症もまれながら認められる。
皮膚症状はほぼ100%に認められ、下腿前面,大腿後面に左右対称に紫斑、紅斑、点状出血を認める。関節症状は50〜60%に認められ、疼痛、腫脹を認める。消化器症状は70〜80%に認められ、腹痛が最も多い。悪心、嘔吐、下痢、下血を伴うこともある。本症の腹痛は激痛であり、急性腹症として発症することもまれではない。消化管症状が皮膚症状に先行する場合も10から20%に認められ、この場合は診断に難渋することが多い。この場合は消化器病変が本症を診断する契機となる場合があり、本症の消化器病変の特徴を知っておくことが重要である。本症例もCTで十二指腸を含む小腸の壁肥厚が診断の契機となった。
の消化器病変は十二指腸を含む小腸が100%、大腸90%、胃60%、食道5%とされている。これらの病変のうち、十二指腸を含む小腸に強い病変を認めることが特徴とされている。毛細血管の攣縮のため腸管の虚血が起こり腸管壁の浮腫や潰瘍が生じる。CTやエコーでは腸管壁の肥厚や造影効果の亢進としてこれらの病変をとらえることができる。内視鏡所見は発赤紫斑様病変、浮腫、びらん、潰瘍などを認める。
本症は対症療法のみで自然治癒することが多いが、腹部症状が強い症例や腎障害がある症例ではステロイド治療を必要とする。また第13因子が低下する例では第13因子製剤が有効である。
原因不明の小児の腹痛でCT、エコーで十二指腸を含む小腸の著しい壁肥厚や造影効果の亢進を認めた場合、
を疑い、内視鏡での精査をすすめる必要がある。
■参考文献
大川 清考,他:
- Henoch紫斑病.胃と腸 38:559-565,2003.
Jeong YK,et al:Gastrointestinal involvement in
:CT findings.AJR 168:965-968,1997.
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